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Architecture & Things

20代を経て辿り着いた。僕の生活に欠かせないプロダクトたち10品

はじめに

2018年11月、遂に30歳になりました。成人を迎えてから10年が経ったのかと思うと感慨深いものがあります。

振り返ると、年を経るとともにたくさんの素晴らしいプロダクトに出会ってきました。同時に多くのものを手放してきました。

特別な趣味がないかわりに傾倒してきたのは、機能やデザインに優れた国内外のプロダクトを試しては自分好みのとっておきを探すこと。高校生のときの文具集めが入口だったことを考えると12年近く続けています。

長い年月を経て気づいたことがあります。それは、何かにこだわりをもつ原動力には大きく2つのパターンがあるということ。

・自分の軸がないことへの焦りにより、こだわりで身を固めて安心する

・自分の軸に沿って手に取ったものを、疑いと虚栄心なく、ただ愛でる

前者については、自分という軸がないことを自覚し、それを隠すために取り急ぎこだわったもので身を固める。

「このような人物として見られたい」「こんなものを持っている自分、イケてるのでは」という他者の目が原動力。気になるものを買っては試し、そして飽きるというサイクルを繰り返します。

僕自身、過去を振り返ると思い当たる節が多々あり、偏愛を綴った以前の記事を読むと思わず苦笑してしまいます。

参考:

もちろん恥ずべきことでもなんでもなく、そうやって次第に自分の軸が見えてくるのもまた事実。

いろいろな失敗を経験して、後者の「自分の軸に沿って手に取ったものを、疑いと虚栄心なく、ただ愛でる」段階に踏み込みはじめた気がしています。

まだ上手く言語化ができないのですが、ものを手に取る動機に不純さがまったく無い。プロダクトの仕様だけでなく、なぜそれを手に取ったのかを自信をもって語ることができるというか。

そのプロダクトとともに歩んでいる生活にストレスがまったくなく、プロダクトを手にした動機に迷いも、他者の目線も一切ない。

このエントリでは、20代を終えた今の価値観におけるプロダクトを紹介します。記事のタイトルは変わりますが、形態は機能に従う。シリーズとお考えください。

 

1. 二宮五郎商店の名刺入れ

社会人になってから、ずっと使っている名刺入れです。当時すこし奮発してコードバンの良いものを買ったので、9年目の今でも余裕で現役です。

2年ほど前から光沢が出るようになってきて、むしろやっと当時スタートラインに立ったような気持ちになりました。

コードバンはホーウィン社製のもの。当初見られた細かな毛羽立ちは、長年のメンテナンスでやっと落ち着いてきました。

ころんとした形状と、裏側にざっくり型押しされた文字列の組み合わせが大好きなポイントです。

そこそこ厚みがあり、厚手の名刺を7枚、クレジットカード等のカード類、お札を数枚入れても余裕があるサイズ感。

ほとんど現金を使わないので、名刺入れ兼財布として毎日持ち歩いています。

一貫して、簡素な作りのプロダクトが好きなのですが、折り紙のように革を折って一点留めしたシンプルさもたまりません。

かちっと黒革だけどビジネス感があまりない、便せんのようなデザインも丁度よいです。

 

2. アーツアンドサイエンスの靴べら

妻とお揃いで持っている靴べらです。真鍮に銀メッキを施したもので、徐々にメッキが剥がれて下地の金色が見えてきました。なかなか良い顔立ちになってきています。

建築の仕事をしていると、新築した建物の検査で靴を脱いで現場に上がることがあります。そんな時にすこしでも様になるようにと買ったもの。

ほとんど革靴を履かない今でも、スニーカーを履くときには必ず靴べらを使うようにしていて、靴べらを使うぶん圧倒的にスニーカーが長持ちします。

繊細な見た目とは裏腹に、ぽてっとした金属の厚みがあります。家の鍵とセットで、いちばん取り出しやすい鞄のポケットに入れています。

最寄り駅から家まで、手のひらに鍵を用意して歩く道のり、この靴べらを手で撫でては幸せに浸る。これは間違いなく、一生使い続ける逸品です。

 

3. Pelikanのボールペン(K805)

高校生のころから続いているドイツ製文具集めの集大成的な1本。ペンの長さと重心の位置が絶妙で、手の中での納まりと主張しすぎないデザインのバランスが完璧だと感じています。

個人的に、頭のなかを整理するときには紙に書き出して言語化する工程が必須なので、ストレスフリーのペンはとてつもなく重要。

ジェットストリームの替え芯(SXR-600シリーズ)を装填できるので、海外インクの粘度が苦手な方もストレスなく使えます。

本家スーベレーンの軸にみられる派手な装飾がないので、Pelikanらしさは頭頂部のシンボルくらい。

たとえば、モンブランのマイスターシュティックの大御所感に一歩引いてしまう文具好きにお勧めの1本です。 

高校生のときにLAMYというドイツ文具メーカーがきっかけでドイツ製文具を長いこと集めてきましたが、この1本に出会って以来、文具コーナーに立ち寄らなくなりました。

 

4. POSTALCOのThree Pen Case

必要最低限のペンを3本だけ持ち歩くことのできるペンケースです。妻とお揃いで使っているので、ふたり同時に使うときは革の質感で見分けています。

メッシュの型押しが施された革は日に日に艶をたくわえていく一方で、真鍮製のスナップボタンがくすんでいく様子。たまりません。

先に紹介したPelikanのボールペンとともに、仕事で欠かせないフリクション2本、細型の三角スケールを入れて持ち歩いています。

ペンケース自体が薄くて細いので、ズボンのポケットにすっと差すことができ、突発的な移動が多いときにも機動性を保つことができるのもメリット。

ペンケース内部のロゴマークは片寄せで配置。表にロゴがでかでかと配置されるデザインが苦手な方にもお勧めです。

内部はやわらかい革で仕上げられていて、仕舞ったペンを傷つけない構造。機能とデザインの抜かりなさを感じます。

 

5. コクヨのソフトリングノート

紙質は十分、使い勝手は100点。オンオフともに、今のところ生活にいちばん馴染んでいるノートです。

プラスチック製で強度がある表紙に、上部に日付欄のある5mm方眼ページ。

オンオフ兼用でこのノートを使っており、短期(日次・週次)のタスク管理としてA5ノート、ミーティングの議事メモと思考整理としてB5ノートを割り振っています。

オンオフ兼用でノートを使う場合、前のページを隠すためにリングノートであることは必須条件ですが、このノートの場合はリングの素材がやわらかいのも特筆すべきところ。

ソフトリングのおかげで、物を書くときリングが手に触れてストレスを感じることは一切なくなりました。

先に紹介したペンケースと並んだときの相性も良くて、セットでお勧めのプロダクトです。

 

6. Kindle Paperwhite

このエントリでデジタル製品を載せるのは悩みましたが、やっぱり素晴らしい逸品なので紹介します。

専門書や勉強の色が強い読書は紙で行うことが多い一方、突発的に読みたくなったものはKindleで読むため、生活に欠かせません。

そして、外出のときは物理的に手に持てる限界を超えられるので、ふと読みたくなったものを読める、悩みの答えをすぐに引き出したいとき本に即アクセスできるメリットは計り知れません。

最新のPaperwhiteの場合、画面だけでなくベゼル部分もガラス製でフラットになっており、アップデートされるごとにデザインが良くなってきているのも嬉しいところ。

機能を深掘りするつもりはありませんが、デジタルでありながら、できるだけ目に優しい仕様も素晴らしいと思います。

純正のファブリックケースを使用しており、冬場、コートのポケットに財布とKindleだけを入れて近所の喫茶店に行くときの高揚感もたまりません。

 

7. マザーハウスのヨゾラ2ウェイバッグ プラス

いま手元にあるもので、最も機能とデザインが秀でているプロダクトというと、迷わずこのバッグになります。

好きなものを持ち歩くツールという点で、鞄には相当のこだわりがあり、過去にいろいろなものを試してきました。

肩掛けの鞄が好きなので普段は肩掛けで使っていますが、重い荷物を持ち歩くときや両手を使いたいとき、3秒でバックパックに早変わりする機能が本当に素晴らしい。

革がやわらかくなってきた顔立ちを含めてデザイン面も申し分なく、形態と機能が両立した最高の鞄だと思っています。

妻とお揃いで使っており、出かけ先でマザーハウスの店舗を見つけるたび、無料のメンテナンスを一緒にしてもらっています。

ちなみに、この人がずっと肩にかけている鞄です。

 

8. kershawのツメキリ(リーフタイプ・革ケース付)

爪切りですが、これで爪を切ったことはありません。けれども毎日持ち歩いている理由は、さかむけをすぐに切るため。

日常的にさかむけができやすく、さかむけができるたびにこの爪切りで切っています。

さかむけなんて家に帰ってからでも対応できますが、一度気になると気になり続けてしまうもの。気づいた瞬間に切除できる心理的メリットを考えると、手放すことは考えられない逸品です。

薄くて小さいながらも、かみ合わせの誤差のない精密なつくりからは、物づくりへの情熱を感じます。

持ち手の裏には、ヤスリが内蔵されており、本当に爪を手入れしたい方にとっても十分な機能を備えています。

  

9. ローランドのプレシャスワックス

このエントリで消耗品を紹介するのは違う気がしたのですが、年を経た今、自信をもって勧められる逸品であるため紹介します。

いわゆる整髪料ですが、ハンドクリームやリップクリームとしても使えるワックス。家具のメンテナンスで使用する蜜蝋に近い香りで、使っていて心地よい逸品です。

あまり消耗品にはこだわらないタイプですが、どうしても避けられない整髪という日常のタスクから「手を洗ってワックスを落とす」という小タスクが無くなることは相当のインパクトといえます。

髪を固める力はないので髪の毛をツンツン立てたい方には向きませんが、髪をそれなりにまとめたい方にとっては、生活の質を上げる選択肢になること間違いなしです。

良いのか悪いのか分かりませんが、100%イタリア産だそうです。

 

10. NOMOSのTANGOMAT

25歳のとき婚約時計として買いました。高校生のときに憧れていた先生が使っていたNOMOSの腕時計。

ドイツ製ならではの質実剛健さと繊細さが同居した佇まいが美しく、僕の大好きなドイツの魅力を凝縮したような逸品です。

美しく焼き入れられた青針とプレーンな文字盤とのコントラストがなんともいえなく、フレームに入った細かい傷ひとつひとつが愛おしいです。

なにより妻と婚約したときの気持ちを思い出させてくれる腕時計として、ひとことで語れない価値があります。

時計の裏を眺めれば、高校生のときに抱いた、先生への憧れの気持ちも湧いてきます。

派手な時計ではないので今まで人に褒められたことはなかったのですが、すこし前に三浦さん(@miuranozomu)に褒められたときは嬉しかったです。あのとき恥ずかしくて、さらっと流してしまったけど大切なものを褒められるのは心から嬉しい。

見せびらかしたい気持ちはないけど、冬はニットの下に隠れてしまうので、すこし寂しいです。

 

以上、10品の紹介が終わりました。もっと紹介したいものがある気がしていたけれど、過不足なくちょうど10品でした。

 

さいごに

あっという間の20代。たくさんの方にお世話になり、色々な生き方に触れました。

読書をするときの机上が昔とまったく違う様子を眺めながら、自分のなかの大切なものや考え方が変動しながら今に至るのだなあと感じました。

ちょうど今日、ある建築家夫婦を描いた『人生フルーツ』という素晴らしい映画を観ました。

建築家である修一さんが、人生最後の仕事を請けた場面で。

クライアントが言っていた「修一さんは実務を離れて長いものの、依頼をした次の日には図面が上がってきた。仕事への姿勢も、道具も、いつでも再開できるように静かに準備されていたのだと思う」という内容の言葉がずっと頭に残っています。

おそらく、若いころからずっと使ってきたのであろう万年筆を手に取る修一さんの姿が、とても印象的でした。

自分の心と、それを形にする道具というのは一緒に磨かれていくものなのだと思う。

そうやってこの先も素晴らしい道具とともに、人生を歩んでいきたいものだと感じました。まだまだ長いぞ、これからの人生。