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Architecture and Things

建築系プロジェクトマネジャーが大切にすべき目線と考え方について

「建築の仕事」というと一般的には、設計や現場監督といった職種が取りあげられることが多い。

 

しかし、広く語られる以上に「建築の仕事」には多くの職種が存在し、ひとつの建築工事が行われるとき、いろいろな役割をもった人たちが関わります。

それら多くの役割のなかでも、ここでは「プロジェクトマネジャー」という職種についてざっくり解説し、そしてそれを全うする上で個人的に大切だなあ思うことを、備忘録的な意味も込めて書いておきたいと思います。

ちなみに「大切にすべき目線と考え方」については建築の技術的な細かい話ではなく、建築に関係のない方でも活かすことのできるよう、敢えて広い視点で書き残しておこうと思います。
すぐに役立たなくても良いけれど、いつか誰かが困ったときの糧になってくれれば、僕は嬉しいです。

 

まずはじめに、僕が建築とどういった関わり方をしているのかということを簡単にご説明しておきます。
建築というと住宅や商業施設など多くの種類がありますが、僕の専門領域としては2009年〜2014年の5年間は「オフィス」、2014年〜現在(2016.12時点)においては「航空施設」となります。
前者については、ざっくりいうとオフィスの構築工事に関わる技術的なマネジメント。オフィスの新規開設や移転に関わる技術的な営業支援・施工管理をメインに携わっておりました。このキャリアの後半では次第に、工事“監理”や設計、プロジェクトマネジャーを横断するような役割になってゆきます。
後者については、主に空港での建築プロジェクトを発注者側の目線で品質・コスト・工期を管理していくというもの。もう少し深堀りすると、所属は設計会社でも建設会社でもなく、エアラインの中の人として建築工事が絡むプロジェクトをマネジメントしていく、インハウスのプロジェクトマネジャーという立ち位置になります。

 

ここで少し気になってきた「マネジャー」・「マネージャー」どっちで表記するか問題についてですが、ここは『総解説 ファシリティマネジメント(FM推進連絡協議会)』に合わせて、「マネジャー」で統一します。

なお補足ですが、筆者は2016年12月29日よりアイルランドへの渡航のため現職を退職しています。加えて、本記事の内容については個人の見解であり、所属していた組織の公式見解ではありませんことをお含みおきください。

 

さて、「プロジェクトマネジャー」というと、建築業界よりもIT業界でよく耳にする言葉かもしれません。ここでお伝えしたいのは建築業界にもそれを担う人たちがいるということ。
そんなプロジェクトマネジャーという職種ですが、その起源は諸説あります。

個人的にしっくりきているのは「アポロの月面着陸計画の際に、プロジェクトマネジャーという職能が誕生した」というもの。

人類が月を目指すということ、それは誰も実現したことのない初めての試みです。

その計画を実現するにあたり、「いやいやこれ、そもそも誰が何をやったら良いのさ?」「どんな感じのスケジュール感でいくよ?」「計画を進めるうえで、どんなことが障壁になるのさ?」ということについて、考える必要があります。 

そういったタスクの検討、スケジュールやリスクの管理を行うリーダーを定めるということ。その役割こそが、プロジェクトマネジャーの起源であるという説です。(僕の社会人経験で見聞した内容のため、間違っていたらごめんなさい。でもちょっと、ロマンを感じませんか。)

 

さて、ここで少し建築の話に踏み込みます。

そのプロジェクトマネジャーという職能が認知され、そして初めて建築業界に持ち込まれたのは、米国でのお話。
大きなお金やたくさんの人たちが関わる建築工事において、その価格の適正判断や、スケジュール、リスク管理において発注者寄りの第三者視点が重要であるとされ、建築専門のプロジェクトマネジャーという役割が定義化されてゆきます。

ちなみに、建設プロジェクトの設計、施工、監理に主眼を置いたコンストラクションメネジメントや、施設の利用側から建物のライフサイクル・リスクマネジメントを行うファシリティマネジメントについてもちゃんと説明すべきかと思うのですが、長編大作になってしまうので割愛させてください。(僕の力不足ゆえ、まとめきれなかった・・・!)

ということで、ここからは僕の短いながらも濃密な経験のなかで学んだ「プロジェクトマネジャーとして大切にすべき目線と考え方」について、建築業界以外でも取り入れられるような幅広さをもって、まとめておきたいと思います。個人的な備忘録を残しておくという意味も込めて。
なお、全く違う意見もあるはずなので、ひとつの事例をしてご活用いただけると幸いです。

 

建築系(それ以外も)プロジェクトマネジャーが大切にすべき目線と考え方

 

プロジェクトの灯台になる

まずもってこれは大前提。プロジェクトを広い視点で管理する役割であるがゆえに、必須となる考え方です。
そのプロジェクトに多くの役割の人たちが関わるというとき、メンバーみんなの意見に中立的に耳を傾け、物事を判断する役割が必要になります。

その役割を担うプロジェクトマネジャーに必要なことは、「誰が何をやるべきか(または、やらないべきか)」「それはどこまでのレベルで、やらないといけないのか」「それはいつまでに、やらないといけないのか」ということを判断のうえお願いをし、「それらの行動が停滞していないか」を確認・管理をすることです。


たとえば、建築工事の場合、「建物が完成する」というのがひとつのゴールになります。

それをさらに細かくすると、「建物の仕様を決める」「工事費を決める」「工事を開始する」・・・。

もっとさかのぼって細かくすると「メンバー間で建物のコンセプトを共有する」「誰に設計をお願いするか考える」「入札を行う」・・・など。

そしてもっともっと・・・! 

このように「建物が完成する」というひとつのゴールを細分化していくと、無限とも思われるくらいのタスクに分かれます。それぞれのタスクを最小単位である「次にすべきこと」まで細分化すれば、その数にきりはありません。
そのなかから、やるべきこと・やらないことを常に判断し、やるべきことについての必要な行動・関わってもらうべき人を考え、適切に協業しながら、プロジェクト全体の舵取りをしていくことが必要です。

 

ここで大切なのは、プロジェクトマネジャーである貴方は灯台であること。

プロジェクトマネジャーとはメンバーを、そして計画を引っ張ってゆくべき存在ですが、綱引きのようにぐっと引っ張るのは違うなあと感じます。
それは灯台のように、ぶれなく光を指し示して、安心してみんなが目的地に向かえるように、そこに立ち続けるということ。

ここはなんだか上手く言えないところなんですが、「綱引きをせずに、灯台でいられるか」って結構重要だよなあと思うのでした。

 

その行動の結果を想像する

さて、そんな目線でプロジェクトを管理していく上で、プロジェクトの進行中に起きるリスクは避けることができません。
無数のタスクをこなす中で、リスクはどこにでも潜んでおり、それらを想像してあらかじめ手を打つことが大切です。

そのためには今の自分の行動・発言がどういう結果を生むのかということを先回りして考え、その結果は適切であるかということを常に想像します。

少し付け加えると、逆に行動しないことでどうなるか、について考えることも大切だといえます。

 

はじめは尊敬すべき先輩・上司への雑談(報告や情報共有というと大げさだから、雑談で良い)を通してアドバイスを適宜もらったり、「おお、それは君、まずいことになりそうじゃないかい?」という第三者ならではの気づきを利用しながら、なんとなく掴んでいけば良い。
そうやって経験を積めば、今後の道すじを想像し、発生しそうなリスクがおのずと見えてくるようになります。 とにかく大切なのは、まだ顕在化していないリスクを見つけるための想像力(もはや妄想力に近い)。

そして想像した結果、「これはこのまま放っておくとトラブルにつながるぞ」というリスクに気づく。そして次の一手として、誰に何をお願いすればそのトラブルは起こらずに済むかを考える。 
「段取り八分」とは本当にそのとおりで、すべての行動の結果は、その段取りがほとんど全てを握ります。
この項目をまとめると、リスクに気づくために行動の結果を想像すること、そしてそのリスクに対してどんな手を打ち、未来のトラブルを避けるのかという目線が大切です。

 

みんなの仲人になる

プロジェクトが進んでいくと関わる人たちが明確になり、プロジェクトメンバーが固まってゆきます。

ここで大切なのが、実際に会う時間に100%の集中力を注ぐこと。
個人的に、不要な細かい会議や打ち合わせは遠隔で進めるべきだと思っています。ですが、建築プロジェクトにおける定例会議はむやみに省略すべきではありません。

そしてそれは単なる打ち合わせとしてではなく「関係者同士の、仲の良さを確認する」という目線を大切にしながら。
定例会議は、タスクの共有や、問題の解決方法をその場で解決するためのものです。

そして、それを通してプロジェクトメンバー同士のコミュニケーションを生で見ることができる、ということが何より大切なこと。
定例会議中にふと垣間見える「あれ、この人とこの人、なんだかギスギスしている」という、なんとなく感じた「仲の悪さ」は、建築プロジェクトでいえば工期の遅れ、現場での事故につながる可能性がとても高い。経験上、トラブルの前兆として「みんな仲良しかどうか」という指標があるなあと感じます。


このとき感じる仲の悪さは、言い換えれば、プロジェクトメンバーがそれぞれ別の方向を向いてしまっているということ。

プロジェクトマネジャーとは、こういった時に、そもそもの目的を灯台のように改めて照らし、みんなが同じ方向を見ながらそれぞれの仕事を行いやすいように場をつくっていく。そんな考え方が大切です。

 

その正当性を真摯に伝えて断る 

プロジェクトマネジャーは、プロジェクトメンバーからいつも何かしらの問い合わせを受け、適切に判断をしていく必要があります。
そのなかで発生するのが、プロジェクトメンバーからの提案。その提案とどう向き合うのかということが特に重要だと考えます。
なぜならば、その提案を採用することで都合がよくなるメンバーもいれば、逆に都合が悪くなるというメンバーもいることがあるため。

基本的には、ひとつのプロジェクトにおいて「その提案の実行がきっかけで、プロジェクトメンバーのなかで不都合を被るメンバーがいないか」という視点をもつことができるのは、プロジェクトマネジャーただ1人です。
メンバー人一人が個人の専門領域を全力で取り組むことができるように、全体を見ることに力を注ぐべきなのはプロジェクトマネジャーだけであるべきだ、とも言い換えられます。
そんな考え方で、プロジェクト全体を見ながら考えその行動が不適当だと判断した場合は、しっかりと不適当であると意思表示をし、それはなぜそう判断したのかという正当性を誠心誠意伝えることが大切です。

 

素直であること

これは全ての根本になることですが、素直であること。

僕の浅い経験での判断で恐縮ですが、プロジェクトマネジャーには大きくふたつのタイプはあると感じています。
それは、疑うことに重きを置くタイプと、素直であることに重きを置くタイプ。もちろんどちらも大切な目線であり、それぞれ欠かすことはできません。


前者については、全ての事実を鵜呑みにすることなく、常に疑うことでリスクを発見するということ。これは大切なことですが、ここにこだわりすぎると発注者側寄り(もしくは発注者)であるプロジェクトマネジャーという立場上、高圧的になってしまうことが、ままある。これはこれでひとつのやり方ですが、僕はどちらかというと後者の「素直であること」に重きを置くほうが良いと感じています。
それは全ての事実をいったん笑顔で素直に受け取り、中立的な立場でよくよく考えて立ち振る舞うということ。踏んでいる手順に、両者の大きな違いはありませんが、みんなにとって声を上げやすい場をつくれるかどうか、という違いがあります。

 

プロジェクトメンバーの多さに伴い、意見の多様性が生まれます。

そこにはそれぞれのメンバーの想いや仕事への姿勢があるし、それはちゃんと素直に受け入れることが大切だと僕は思っています。

仕事とは愛であると個人的に考えていますが、愛をもって仕事・人に向き合うこととは「素直であること」を大切にすることだと感じます。
もちろん「戦略的に愛を使え」という寂しいことを言いたいわけではなく、結果的に息苦しくなく仕事をしていく上で大切なことって、素直でいることだよなあと僕は思うのでした。

 

最後に愛についての話になってしまいましたが、仕事と愛は絶対に切り離せないので、これもまた良しとさせていただきます。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

 

プロジェクトマネジャーについての自分なりのさらに細かい手法については、本当に大事な話は「そういえば、あれって・・・」とフランクに扱うことや、建築技術的な話を絡めるとさらにいろいろと細かいことはあるのですが、そのあたりはいつか、小さな居酒屋でゆっくり語りましょう。

それでは参考までに、プロジェクトマネジャーをする上で、これはすごく参考になったぞという本を3冊ご紹介いたします。

プロジェクトマネジャーに欠かせない、ファシリテーションスキルを学ぶのにとても参考になった一冊。内容をノートに転記した(絶対そこまではしなくて良い)ほどの個人的バイブルです。

 

並行する多くのプロジェクトをストレスなく管理するための考え方が詰まっています。GTDと言われる古くからのタスク管理方法が詳しく解説された1冊です。

 

3冊目は、今の貴方が読みたい本を読んでください。たまには少し息抜きを。

詰め込みすぎは良くないです。