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Architecture and Things

「弘前市民会館」前川國男

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青森県は弘前市の「弘前市民会館」。
ル・コルビュジエに師事していた前川國男の設計による、管理棟とホールからなる文化施設です。
昭和39年に「市民のために」と建てられたこの建物は、約50年の時を経て今もなお弘前市民に愛されている。それを肌で感じました。


外の顔は打放しのコンクリート。
通常、冷たい印象になりがちな打放しでありながら、不思議と温かみがある。

この建物の場合、コンクリートを流し込み固めるための型枠に、木目や木の節が目立つもの・皮がついたものを敢えて使っています。
これにより、仕上がったコンクリートの表面にぼこぼことした木目調が写し取られます。
木肌が再現されたコンクリートを全面に用いることにより、コンクリート特有の無機質な雰囲気を柔らかくしているのでした。


管理棟の入口から中に入ると、建物の大きさに対して天井が低いことに驚きます。
しかし、階段に向かって少し進むと天井は一気に高くなり、重厚な階段が佇む大きな吹き抜けが現れます。


そこで上を見上げると、明け方の空を再現したという群青色の天井。
そして、天の川をイメージした照明がきらきらと輝いています。宙に浮いているかのような中二階のカフェでは、この星空を眺めながらゆっくり過ごすことができます。


もうひとつ、吹き抜けで輝くステンドグラスは、開館50年の記念として設置されました。
大きな老朽化がみられたり、現行の耐震基準を満たすことができない50年以上前の建物は取り壊されることが少なくない。
そのなか、弘前市民会館は大規模な改修工事によって、市民に愛されてきたそのままの姿を残すことになりました。


現代の財政組織の枠の中にハメ込まれて「予算」なしには何ものも実現しない事はワカリ切ったことであります。然し予算に先行するものは何よりも先ず市民の願望であるということを忘れては本末転倒のそしりを免れません。

かつてヨーロッパ中世の市民はこうして彼等自身の美しい町を築き上げてきました。現代都市を築きあげるものは民主社会の「市民の心」であって決して「予算」ではありません。

(『設計者のことば』より) 


当時から変わらず地域の芸術文化の発信地として活用されるホール。
利用者のニーズに合わせて内装とメニューが見直された飲食機能。
入り組んだ形状を活かして子供たちが遊びまわることができる外部環境。


前川國男が大切にした「市民の心」は今もなお建物に息づいており、そして、これから先もきっと守られていく。そんなことを思いました。

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 天の川を眺めながら頂くアイスコーヒー。これまた絶品でした。