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Architecture and Things

「ヤオコー川越美術館(三栖右嗣記念館)」伊東豊雄

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埼玉県は川越市の「ヤオコー川越美術館(三栖右嗣記念館)」
ヤオコーと呼ばれるスーパーを、チェーン展開する企業の創業120周年 記念事業として建設されました。
展示されている作品は全て、ヤオコーの会長がコレクションしていた作家 三栖右嗣氏によるもの。


公共事業としてではなく、一企業・一個人による美術館は、建物から身近に寄り添ってくれるような優しいものがとても多い。
なぜならば、純粋に「自分の愛する美術品をみんなに見てもらいたい」という想いがきっかけで計画されることが多く、その想いは必ず建物にあらわれる。
ヤオコー川越美術館も、そのひとつだと思いました。


キュレーターがその度に選んだものを展示する公共美術館は、それぞれの作品に干渉しないよう、装飾を排した真っ白な内装が基本の「ホワイトキューブ」という考え方で設計されることが多い。

一方、はじめから展示物が決まっている個人の美術館。こちらは設計の段階から、展示される作品のイメージが反映されることで、その作品たちに想いを寄せた空間であることが多く、展示物の素晴らしさを建築が後押しします。

ポストカードに描かれたスケッチのとおり、四角形を、エントランス、カフェ、展示室1,2の計4部屋に区切ったプランが特徴。

展示室については、個性的な2つの空間で構成されています。

天井から床の中心へ収束した漏斗のような空間。下から立ち上がるはっきりとした光は、初期の作品の粗い力強さを際立たせます。

天井を上から摘んで持ち上げた富士山のような空間。山頂の窓から注ぐやわらかな自然光は、後期の作品がもつ息が止まるような美しさを引き立てます。

そして、そこに展示される作品に合わせて、絶妙な淡色で塗られた展示室の壁。
それぞれの絵画と壁の色味が、見事に調和していると感じました。


建物の外をぐるっと囲んでいるのは、地下水を汲み上げた水盤。この水辺では、野鳥が水を飲みに集まっていて、水質の良さがうかがえます。
カフェスペースに設けられた建物の唯一の窓からは、この水辺をゆっくりと眺めることができます。


入場料については、
■入場券+飲物‥¥500
■入場券+飲物+ケーキ‥¥750
■入場券+おはぎ+抹茶‥¥600
というびっくりの安さ。
これについても、多くの人に、作品に触れてほしいという会長の想いと、美術館運営以外の本業で収益を得ている企業だからこそのなせる業。

ちなみにここで出される、おはぎがまた絶品。らしい。

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 残念ながら、おはぎは売り切れだったのでアップルパイを。
 パイ生地が想像以上にサクサクしていて、とても美味しかったです。(なんでも、うまい)